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2007年1月16日 (火)

がっかり、、向井千秋ドラマ

「向井千秋さんっていう人を、2時間ちょいで伝えるには無理がある」
っていうのが、このドラマを見た正直な感想。

「女の一代記」として「いままでの女の生き方を変えた人の人生ドラマ」ってことだけど、大切な部分が足りない。それは千秋さんを育んだ人たち、つまり向井千秋さんのお母さん・内藤ミツさんや、千秋さんが医者になるために入った慶大附属中学・高校、そこへ通うために、群馬県館林から東京で独りで出てきて下宿した先の茶道の先生(高比良信〈たかひら・しん〉さん)。確かにミツさんのエピソードはあったが、高比良信先生のエピソードは全くない。このあたりの女性たちとの関わりをもっとしっかり書かないと(特に茶道の先生)、それまでの女性たちの「自立のDNA」が脈々と生きて、向井千秋さんの"自立の精神"を形作っているということにならない。それをしっかり伝えることが「女の一代記」としては大切なのではあるまいか。これは万起男さんの原作『君についていこう』には、ちゃんと書かれていることだ。

「団塊の世代」の男の先輩方は、それまでの男性観・女性観、考え方をことごとく変えてきた、そしてその変化に翻弄されながら変わってきた人たちとも言えると僕は感じてる。このドラマも、団塊の世代の一人である、「男には仕事、女は家庭」の万起男さんが、どう変わっていったか、という一面がある。そういうドラマとしても、原作にあった大切なセリフが一個抜けてた。

打ち上げ前日にフロリダの浜辺で二人話すシーンがあったけど(原作では前日でなく数日前。クルークォータースという、出発前のクルーが合宿する宿舎のベランダでのこと)、千秋さんの言う大切なセリフが、原作にはあったのだ。それは

「マキオちゃんに、私の底力を見せてあげるからね」っていう一言

いままで「毛利さんや土井さんにはない『専業主婦』って選択肢が、チアキちゃんにはあるじゃないか」(これはドラマにあった)とかいった"女性の底力を全然わかってない"言葉を吐いてきた万起男さんに対して、千秋さんが言った言葉。これを聞いた万起男さんが「なんてことを僕は言ってしまったんだ」と改めて感じるシーンが、原作にはある。これは「団塊世代の男の物語」としても抜いて欲しくなかった。それに万起男さんは、ただ単に千秋さんをフォローするために、誇りを持ってしておられる病理医の仕事を放り出して、アメリカに行ったのではない。ちゃんと病理医としての研究のためにアメリカに行ったのだ。決してただ単に「君についていこう」ではないのだ。そういう背景がまったくドラマにない。万起男さんがちゃんとプロとして仕事や研究をこなす傍ら、千秋さんをフォローして「宇宙飛行士の家族」として迎えた出発前日。ひとり飲みながら、自分の女房・千秋さんが宇宙飛行士になってから出発前日までの9年間、千秋さんに出会ってからの十数年を振り返り、涙してしまうシーンも原作にはあったのだ。これもドラマにはない(万起男さんが嫌がったのか? でもあって欲しかったな)。また万起男さん役の石黒賢さんがやってた「庭のナスへの水やり」。この「ナス」にもものすごいエピソードがあるのだ。また、帰還の際、飛行士達の家族はシャトルの降りてくるケネディ宇宙センターの滑走路の端で待っている。いちばん心配していた人がいちばん最初に帰還に出会えるように。合成でいいからこのシーンは作って欲しかった。

とにかく支える人たちが、このドラマでは全て希薄だったのだ。番組の最後に「このドラマは事実を元にしたフィクションです」とはあったけど。うーーん、なんかすごく薄っぺらく、この向井万起男・千秋夫妻が伝わってないか、すっっっごく心配。お願いだから是非、原作『君についていこう(上)(下)』『続君についていこう 女房が宇宙を飛んだ』(両方とも講談社α文庫)を読んで欲しい。

追伸
飛行機&ロケットヲタクとして。f^_^;;;;;;
これは「女の人生記」であって、ロケットものではない、という所を差し引いてもせめてこれくらいは気を遣って欲しかった2点。

シャトルの飛行を見守るヒューストンのミッションコントロールセンター(MCC)のセット。管制官のディスプレイに、ウィンドウズXPの標準壁紙を立ち上げたまま写すのはやめて欲しかった。千秋さんの飛行は94年、WIN95すらもでる以前だし、いまでもそんなOSで動かしてはいないはず。DOSプロンプトの画面にすれば、それなりに雰囲気は作れたろうに。

千秋さんがジェット練習機を使ってるする「耐G訓練」。NASAではT-38練習機を使ってやったのに、使われていた映像は「F-14ジェット戦闘機」だった。飛び上がるシーンぐらいならNASAだってPRになるから喜んで使わせてくれるだろうに、なぜこんな映像持ってきたんだ。

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コメント

Tonさん、今更ですが、あけおめ~。
土曜日はシンドウさんとライブでしたので、
原作がお気に入りの私はこの番組を観ることが出来なかったのですが、そうだったんですかぁ・・・
限られた時間内とはいえ、Tonさんの悔しさが伝わってきますね。
また、今年も宜しくお願いしますね。

投稿: あゆっち | 2007年1月17日 (水) 11時30分

>あゆっちさん

あけおめっす! 「武蔵野詩人」、盛り上がったみたいですね。
僕もその日はそろいこで「歌って」ました。

>原作がお気に入りの私はこの番組を観ることが
>出来なかったのですが、そうだったんですかぁ・・・

あ、すいません、ネタバラシしちゃいました? ごめんなさい。
でも、原作、ひょうひょうとしてていいですよね。

>限られた時間内とはいえ、Tonさんの悔しさが伝わってきますね。

うーーーーん。
シャトルに関する精密さはもとより求めてなかったんですが、
なんか向井千秋という女性を伝える上でね。。。。

原作の読み方も人それぞれですが、
千秋さんの、食いしん坊で、チャレンジ精神にあふれてて、
どこでも寝られてって豪傑性を、さらっとだけ。
面白いエピソードばっかり並べただけって感じちゃったんです。

ただ、googleで「向井千秋」で検索して、
ひっかかったblogを見ると、概ね好意的なコメントが多い。
「後半は泣いてしまいました」とか。原作を読んでなければ
良かったか。僕が変わりものなんでしょうね。僕が見たい物を
作ったらドロくさくって見られたもんじゃないかも。。。

もしビデオ録ってないようならお貸ししますよ。

投稿: さかた | 2007年1月17日 (水) 13時42分

原作を読んでなかったので「面白いコメディーだった」というのが正直な感想。
どこまでは本当の話でどこからが「演出」なのかと....。
ただ、NSDA?の壁がまるで秘密基地のような感じになっていたのが別な意味で笑えた。
無重力シーンもほんのちょっとしかなかったしねぇ....まぁ日本の2時間テレビドラマでは限界なのかも。

映画のハリーポッター(1、2)のように「セリフの1つ1つまで原作と同じ」なのもまたどうかとは思う(^-^;)

投稿: をんばせ | 2007年1月17日 (水) 23時57分

>をんばせさん

こうして僕の感想をひっくり返してくれると、すごく嬉しいです。

やっぱり僕は、あの夫婦を大好きすぎるのかもしれません。
万起男さんの本も原作だけでなく、『ハードボイルドに生きるのだ』
とか、病理医としての厳しい仕事に関するインタビューとか
文春に書いていたブックレビューとか、大体目を通していますし、
千秋さんの宇宙飛行に関する本も、ご自分の書かれたものだけでなく
否定的な批判めいたものまで、読んでますしね。
館林の町も見に行ってしまったし。。。

万起男さんの病理医としての、医学部助教授としての厳しい仕事に
関しては、ぜひ下記のHP見て欲しいです。

http://www.ntt-f.co.jp/fusion/no32/tokusyu/index.html

投稿: さかた | 2007年1月18日 (木) 07時19分

「向井千秋さんをモデルにしたコメディ」だから面白かった、のであって「向井千秋さんの半生記」として見ると不十分すぎる。
弟さんの病気を直すために医者になる!と決意したのにその後、弟さんの話は一切ナシ。
そのために医学部に入ったのに何故心臓外科医を選択したのかドラマでは納得できるような場面・セリフがない。
指導教授にあれほど言って心臓外科医になったのにあっさり宇宙飛行士を選ぶ。話としては面白いが人間的にどうなのか、ドラマとしては説明不足すぎ。
やっぱり2時間枠では無理があるね(^^;)

投稿: をんばせ | 2007年1月20日 (土) 13時17分

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